渡部陽一への恐怖。

渡部陽一
2010年、テレビ業界を席巻し、一気にお茶の間の人気者になった戦場カメラマンの渡部陽一氏のことは、僕もご多分に漏れず、すごく好きで、ザッピングしていて彼がでている番組を見つけると、つい手を止めてしまうようになっている。
今日も、ザッピングをしていたら、脳科学者の茂木先生監修のクイズ番組に渡部陽一氏がでていたので「お?おもろそやなぁ」と思わず手を止めた。
番組自体はさまぁ〜ずと優香が司会をしている単なるクイズバラエティで、番組内ではインテリ芸人、ロザンの宇治原が3連覇なるか、というのがメインテーマであり、渡部陽一氏もメインで登場と言うよりは、「今、旬だから」みたいな出方をしていた。そんな中、意外に健闘する渡部陽一氏がピックアップされ、茂木先生に脳に関する質問をするという場面になったときの、渡部陽一氏の質問にちょっと冷や汗が出た。



「どうしても、戦場に戻りたくなってしまうのですが、

 これは職業病でしょうか?」


という質問だった。

それを見た時、僕は背中がひやっとしたのである。

なんのことはない、ただのバラエティ番組で、あの木訥な口調にくわえ、画面の下にはテロップがゆーっくり出てきて、完全に『ネタ扱い』されているし、渡部氏がそれを言い終わると、みんな笑い出して「出た、渡部節」という感じになったのだけど、それにもかかわらず、僕の背中はなんかゾゾゾっとした。

「どうしても戦場に戻りたくなってしまう」という、聞きようによってはとても怖い言葉をニコニコした表情とゆっくりした口調で茂木先生に投げかける雰囲気が、正直不気味だったのである。

また、渡部陽一氏自身を見ても、笑顔ではあるが、心から「よくわからなくて困っている」という感じで茂木先生に質問しているような気がした。まるで、自分の中で今は息を潜めている、行動的で攻撃的で、刺激を求める人間性が暴れ出しそうになっていて、それを止められなくて困っているというように見えたのである。そして、その質問を受けたときの、茂木先生は一瞬、張り付いたような表情になったように見えた。なんというか、茂木先生だけは、口調や外面ではなく、渡部陽一氏の質問、困惑の意味をきちんと理解し、その不気味さに「ぞっ」となったように見えたのである。

その後の、茂木先生の回答はこうだった。

「1で生きてきた人間が、100を経験すると、もう100でしか満足できなくなる。渡部さんにとって、戦場が唯一100になれる場所、日本では100を経験することができないから、戦場に戻りたくなってしまうのではないでしょうか」

というものだった。

渡部氏は、ニッコリと笑うと「ありがとうございました」と頭を下げ、そのあと、ただニコニコと回答を繰り返し、淡々と決勝に進出し、淡々と決勝戦で敗北し、淡々と準優勝をしていた。エンディングでは、出演者が舞台中央に集まり、優勝したやくみつるがコメントをしているのを隣で渡部氏がニコニコ見ていた。渡部陽一氏以外の全員が、その時画面の中で、芸能人としての仕事をしていた。けれど、当の戦場カメラマンはただ独り、そこで休息しながら、「退屈だなぁ」と感じながら、次の戦場に向けて束の間のレクリエーションに時間を潰しているだけのようにも見えた。

昨年かに子供が生まれたという渡部陽一氏、それでも戦場に戻りたくなってしまうと言う。
テレビでブレイクし、「可愛い」だのなんだのと言われているけれど、そして別にそれは悪いことだとは思わないけれど、彼にとって、テレビ出演は戦場への旅費稼ぎであり、退屈しのぎであり、完全な「オフ」なのだろうと思う。

それをニコニコと「これは職業病でしょうか?」と訊いた彼の底知れぬ感じに僕は少しだけ、恐怖を覚えたのだと思う。



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