クリスマスツリーを飾り付ける。

寒い。

毎年、「冬ってこないに寒かったっけ?」と思うし、「夏ってこないに暑かったっけ?」と思うのはこれ、僕に学習能力がないからだろうか。いや、みんな多かれ少なかれ、そう思ってるだろう?
ということで、いよいよ冬将軍がやってくる。冬は嫌いだ。まぁ夏も嫌いだし秋も春も別に好きではないのだけれど、嫌いな冬をいかに楽しむか、これは自分の人生を「素敵」にする上で重要な考え方であると僕は思う。

冬を楽しむといっても、スキーやスノーボードのような能動的アウトドアアクティビティには興味がない。今、「興味がない」とかっこつけたけれど、本当は興味津々で、行けるものなら行きたいけれど、金子が及ばないため「行けない」のである。かっこつけてごめんなさい。
僕がもし金満大富豪であれば、来る冬に対して、さして万全な準備をせずとも「ほな、南国でも行ったろかいな、プライベイトジェットを手配しておくれ」と一言云えば住む話なのだけれど、なにぶん赤貧が服を着て歩いているような現状において、なんの準備もなく冬を迎えるというのは、これ、危険である。
貧民、赤貧が冬を、というか人生を楽しもうと思ったら、何かにつけて予め十全な準備が肝要なのである。

前置きが長くなったが、そういった理由もあって、とりあえず来る冬に備え、冬の代名詞である「クリスマス」に向けて、クリスマスツリーを飾り付けることにした。幸いにして三葉さん宅にはクリスマスツリーと三葉さんお手製の飾り付けが既に用意してあるため、僕が身銭を切る必要もない。貧乏人にはありがたいイベントとなった。

しかし、いざクリスマスツリーを組み立てて、その枝枝に飾り付けをぶら下げていく段階になって、これはなかなかややこしいなということに気付いた。

飾り付け開始当初、僕は無計画に、デタラメな鼻歌を歌いながら、ツリーの枝枝にデタラメにリボンと鈴をぶら下げて「ほほん、ゴージャスやん」などと嘯いていたのだけれど、飾り付けの在庫が少なくなってきた頃になって、ツリーにぶら下がる飾り付けのバランスの悪さが如実になってきたのである。もともと三葉さんが準備してくれていた飾り付けは真っ赤なリボンと鈴をモチーフにした小物の2種類である。またリボンは三葉さんの手作りであるため、そんなに大量生産されていない。

ある箇所には大量のリボンと鈴がぶら下がっているのに、ある箇所は真緑。つまり、なんの飾りもぶら下がっていない。

僕と三葉さんは床に座り込んで、決して動こうともせず、楽をしながらツリーを挟んで向かい合うかたちで飾り付けを行っていたので、三葉さんサイド及び、僕サイドの面は、それはもう豪華な、豪華すぎる飾り付けが完成していた。しかし、ツリーを90度回転させると、そこはもう『森』としかいいようのない状態で、急に寂寞としていたのである。


「これではダメだ」


僕はそう呟いた。これではまるで現代における『格差社会の縮図』。つまり自分及び三葉さんサイドの豪華な側面は金持ちの楽しむクリスマスであり、それに対してその両側面の『森』にあたる部分は下等庶民がつつましく過ごすクリスマスという感じがして、さらに「僕」はどう考えても『森』の方に位置づけられるなぁと思えてきて寂しくなったのである。

そこで、「持てる者は持たざる者へ」の精神に則り、僕サイド及び三葉さんサイドの豪華すぎる面からいくつかのリボンや鈴を外し、『森』への移植を始めた。するとどうだろう。さきほどまでは格差社会の縮図のようであったクリスマスツリーが徐々に平等に。みんなが笑顔で暮らせるような感じになってきたのである。

しかし、問題は終わらなかった。均等に飾り付けを終えて三葉さんは「おしっ」とフィニッシュを告げようとしたとのだけど、ツリーを睥睨していた僕は再び「これではダメだ」と呟いたのである。

というのも、なんか、リボンばかり集まっている箇所があったり、鈴ばっかり集まっている箇所があったりして、リボンは赤と金色で絢爛豪華だが、鈴は薄い金色なので、そんなに目立たず、なんかそこに僕は『クラスの縮図』を感じたのである。
つまり、なんか、学校において、目立つヤツは目立つヤツと群がって、集まって楽しそうにしているけれど、目立たないヤツは目立たないヤツらで集まって、息を潜めて、「目立つヤツの邪魔をしないことが自分たちの使命である」と悲しいはき違えをしている、あの感じを思い出したのである。

そこで僕は、リボンと鈴を入れ替え、鈴とリボンを入れ替え、鈴もリボンも均等にツリーに散らばるように再度入念に作業を始めた。その頃には、三葉さんはすっかり飾り付けに飽きていた。

苦労が功を奏してようやく世界が真の平等を手に入れたクリスマスツリー、そこにピカピカのやつをグルグル巻きにして、ようやく点灯してみる。

冬の素敵、クリスマスツリー

うん、とてもいい。ここにはこれから始まる冬へ向けての、赤貧なりの『素敵』がつつましく実現されている。少なくとも僕はそう思った。


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