派遣切り切り。
サブプライムローン問題に端を発した世界恐慌の渦に飲み込まれる我が国ジャポン。出口のない暗黒海路を日和もなく彷徨い歩く労働者の群れ。
僕なんかは、サブプライムローン問題のことをよく知っとるから、必然現在の労働者の境遇が看過できないほど劣悪大ピンチだということがよく理解できる。ホンマに大変やなー。
そういう僕だから情報収集に関して枚挙に暇がない。は!しまった!「枚挙に暇がない」を使いたくて、全然間違った使い方をしてしまった。恥ずい。
先日もニュース番組を観ていたら、やっぱりやっていて、労働問題。
なんでも、おびただしい数の派遣労働者たちが雇用主からの突然の解雇通告を受けて、うろきてもうてるらしやないか。あ、ちなみに「うろきてもうてる」というのは、関西弁で「愕然として狼狽えている」ぐらいの意味です。アクセントは「ろ」です。僕は「えらいこっちゃ」と思って、言うて、テレビにかぶりついた。
派遣労働者の直面している現実は、甚だしく劣悪最悪であった。
少島義明(すこしまよしあき)さんの例を見てみると、悲惨であった。
少島さんは今、大手三菱重工でパイプを切断する仕事を仰せつかったはる、36歳でバリバリの派遣労働者である。彼は28歳から8年間パイプを切断し続けていて、時給1,100円。少しく心許ない金額である。
ナレーターの話に耳を傾けてみると、彼は偉いので、雇い主が用意した寮に入居しており、月々3万5千円もの大金を上納しているという。寮住まいで光熱費が不要であるとは言え、3万5千円といえば大金である。350円のものが100個買えることを想像してみればわかるでしょ? これを住居費として搾取されているというのは、本当に可哀想である。
そういう卑劣な搾取の憂き目に遭い続けた結果、ナレーターに寄れば、彼が月々自由に使えるお金というのが、たった13万円しかないというから驚きである。13万円で一体何ができるであろうか。食費を1日4,000円に切りつめても12万円かかってしまう。もう1万円しか残らないのである。それにたまにはピンクサロンやソープランドの類にも行かなアカンし、キャバクラにも通うだろう。そしたらキャバ嬢のおねいさんとねんごろになるため、携帯電話でバカスカ電話をかけなアカンから、電話代はまぁ、概算で4万はいくな。スターバックスでサンドウィッチも食わなアカン。フランフランでお香も買わなアカンというのに、13万円しかないのである。そうなれば当然、少島さんに蓄えは一銭もない。
インタビューに答える少島さんのバックには引っ越しの荷物がうずたかく積み上げられていた。なぜなら寮を引き払わねばならぬからである。なんたる仕打ち。
少島さんは言う。「何を恨んで良いのかわからないです。国なのか、会社なのか…」溜息を吐いて俯く少島さんの後ろには大量の荷物がある。その中にはピッカピカのエアロバイクが置いてある。なぜなら運動は必要だもん。
36歳という年齢を考えても、エアロバイクは外せないアイテムである。これもたぶん非常に高価であったのだろう。そんなエアロバイクを、少島さんは、買ったのである。
ナレーターの話は続く。
本来であれば、少島さんは2009年3月まで雇用されている契約だったのである。それが唐突に2008年の12月末日で契約終了を言い渡されたというのだ。なんたる!なんたる暴挙!
僕は激烈に激昂し、ソファをどついた。埃は立たなかった。妻が掃除をしてくれているからね。
少島さんは言う。
「蓄えもないのに、寮を出て行かなければならない。次の働き先もないから引っ越し先の敷金礼金は、借財借金でまかなっている。来年3月まで雇用してもらえるという約束だったではないか」と。
僕は泣いた。滂沱の涙に溺れた。
可哀想な少島さん。まさにバッドタイミング。
少島さんはたぶん財を蓄えるつもりだったのである。12月から3月までの4ヶ月間で、敷金礼金を賄えるだけの金子を、たった4ヶ月で貯めるつもりだったのだ。8年間、一銭も貯蓄しなかったけど、それはまぁ、それである。
いっちょ頑張ろうと思っていた矢先、少島さんは派遣先に切られたのである。
派遣社員というのは、露骨に明日をも知れぬ身である。
正社員よりはスリリングである。だからこそ、常日頃から貯蓄を行って然るべきだし、契約満了の暁には、スムースにネクストカンパニーに行けるよう、スキルを磨くのも当たり前のことである。
でもまぁ、そこはいったん脇へやっておいて、そんな固いことは言わいでええやないか。
少島さんは今、契約終了の撤回と、正社員登用を同時に直訴するという荒技に出ている。なんたるバイタリティ。通常の頭脳であれば、一旦契約終了を撤回していただいて、業務に奮闘する姿を御上に見ていただき、その後正社員登用を訴えるという段階を踏むはずだけども、まぁそれはそれでいいじゃないか。さらに少島さんは労組に加入し、不当解雇を訴えるため、早朝から守衛門の前で雇い主への恨み辛み、罵詈雑言を声高に叫びながらビラを配っていて、正社員からシカトを食らい続けている。
それでも少島さんはへこたれたりしない。まぁ、「仕事に集中できなくてミスしたりしてる」という弱音を吐いているたけど、人間だもの、仕方ないよ。
こうやって派遣切りの憂き目にあっている社員が頑張っているというニュースをたくさん見る。けれど、なぜだかわからぬが、最終的には鼻から侮蔑の嗤いしか出てこない僕は蓋し失礼である。
エアロバイクが買えないので八つ当たりをしているのだろうか。
「少島。お前には今の雇用地獄を嘆く権利はない」という気持ちが、つい、うっかり。
そんな慈愛の感情もエアロバイクも持たない僕は今日、ボーナスで巨額の金子を手にしたので、妻にプリンを買って帰った。
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僕なんかは、サブプライムローン問題のことをよく知っとるから、必然現在の労働者の境遇が看過できないほど劣悪大ピンチだということがよく理解できる。ホンマに大変やなー。
そういう僕だから情報収集に関して枚挙に暇がない。は!しまった!「枚挙に暇がない」を使いたくて、全然間違った使い方をしてしまった。恥ずい。
先日もニュース番組を観ていたら、やっぱりやっていて、労働問題。
なんでも、おびただしい数の派遣労働者たちが雇用主からの突然の解雇通告を受けて、うろきてもうてるらしやないか。あ、ちなみに「うろきてもうてる」というのは、関西弁で「愕然として狼狽えている」ぐらいの意味です。アクセントは「ろ」です。僕は「えらいこっちゃ」と思って、言うて、テレビにかぶりついた。
派遣労働者の直面している現実は、甚だしく劣悪最悪であった。
少島義明(すこしまよしあき)さんの例を見てみると、悲惨であった。
少島さんは今、大手三菱重工でパイプを切断する仕事を仰せつかったはる、36歳でバリバリの派遣労働者である。彼は28歳から8年間パイプを切断し続けていて、時給1,100円。少しく心許ない金額である。
ナレーターの話に耳を傾けてみると、彼は偉いので、雇い主が用意した寮に入居しており、月々3万5千円もの大金を上納しているという。寮住まいで光熱費が不要であるとは言え、3万5千円といえば大金である。350円のものが100個買えることを想像してみればわかるでしょ? これを住居費として搾取されているというのは、本当に可哀想である。
そういう卑劣な搾取の憂き目に遭い続けた結果、ナレーターに寄れば、彼が月々自由に使えるお金というのが、たった13万円しかないというから驚きである。13万円で一体何ができるであろうか。食費を1日4,000円に切りつめても12万円かかってしまう。もう1万円しか残らないのである。それにたまにはピンクサロンやソープランドの類にも行かなアカンし、キャバクラにも通うだろう。そしたらキャバ嬢のおねいさんとねんごろになるため、携帯電話でバカスカ電話をかけなアカンから、電話代はまぁ、概算で4万はいくな。スターバックスでサンドウィッチも食わなアカン。フランフランでお香も買わなアカンというのに、13万円しかないのである。そうなれば当然、少島さんに蓄えは一銭もない。
インタビューに答える少島さんのバックには引っ越しの荷物がうずたかく積み上げられていた。なぜなら寮を引き払わねばならぬからである。なんたる仕打ち。
少島さんは言う。「何を恨んで良いのかわからないです。国なのか、会社なのか…」溜息を吐いて俯く少島さんの後ろには大量の荷物がある。その中にはピッカピカのエアロバイクが置いてある。なぜなら運動は必要だもん。
36歳という年齢を考えても、エアロバイクは外せないアイテムである。これもたぶん非常に高価であったのだろう。そんなエアロバイクを、少島さんは、買ったのである。
ナレーターの話は続く。
本来であれば、少島さんは2009年3月まで雇用されている契約だったのである。それが唐突に2008年の12月末日で契約終了を言い渡されたというのだ。なんたる!なんたる暴挙!
僕は激烈に激昂し、ソファをどついた。埃は立たなかった。妻が掃除をしてくれているからね。
少島さんは言う。
「蓄えもないのに、寮を出て行かなければならない。次の働き先もないから引っ越し先の敷金礼金は、借財借金でまかなっている。来年3月まで雇用してもらえるという約束だったではないか」と。
僕は泣いた。滂沱の涙に溺れた。
可哀想な少島さん。まさにバッドタイミング。
少島さんはたぶん財を蓄えるつもりだったのである。12月から3月までの4ヶ月間で、敷金礼金を賄えるだけの金子を、たった4ヶ月で貯めるつもりだったのだ。8年間、一銭も貯蓄しなかったけど、それはまぁ、それである。
いっちょ頑張ろうと思っていた矢先、少島さんは派遣先に切られたのである。
派遣社員というのは、露骨に明日をも知れぬ身である。
正社員よりはスリリングである。だからこそ、常日頃から貯蓄を行って然るべきだし、契約満了の暁には、スムースにネクストカンパニーに行けるよう、スキルを磨くのも当たり前のことである。
でもまぁ、そこはいったん脇へやっておいて、そんな固いことは言わいでええやないか。
少島さんは今、契約終了の撤回と、正社員登用を同時に直訴するという荒技に出ている。なんたるバイタリティ。通常の頭脳であれば、一旦契約終了を撤回していただいて、業務に奮闘する姿を御上に見ていただき、その後正社員登用を訴えるという段階を踏むはずだけども、まぁそれはそれでいいじゃないか。さらに少島さんは労組に加入し、不当解雇を訴えるため、早朝から守衛門の前で雇い主への恨み辛み、罵詈雑言を声高に叫びながらビラを配っていて、正社員からシカトを食らい続けている。
それでも少島さんはへこたれたりしない。まぁ、「仕事に集中できなくてミスしたりしてる」という弱音を吐いているたけど、人間だもの、仕方ないよ。
こうやって派遣切りの憂き目にあっている社員が頑張っているというニュースをたくさん見る。けれど、なぜだかわからぬが、最終的には鼻から侮蔑の嗤いしか出てこない僕は蓋し失礼である。
エアロバイクが買えないので八つ当たりをしているのだろうか。
「少島。お前には今の雇用地獄を嘆く権利はない」という気持ちが、つい、うっかり。
そんな慈愛の感情もエアロバイクも持たない僕は今日、ボーナスで巨額の金子を手にしたので、妻にプリンを買って帰った。
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